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埼玉グルメ紀行 第1回 その2

 

我々のような洗練された埼玉県民は、食事の前にデザートを食べてしまうような野蛮なことは、休日だけはしないようにしている。まずはしっかり腹ごしらえだ。

 

下調べをし、店のホームページもチェックし、休みではないことを確認した手打ちうどん“S”はゴールデンウイークの間はお休みの旨を伝える張り紙で我々を迎えてくれた。

 

しかし、これぐらいのことは埼玉県ではよくあることだ。

もちろん次の候補も下調べしてある。

 

次は、私がまだ若かりし頃、赤羽周辺の部落、浮間に住み、たしかまだ茨城県民として税金を納めていたころによく通った手打ちらーめん「満月」である。

個人的にはこちらのほうが第1候補であったのでしてやったりである。

 

ここもホームページで休みでないことは確認済みだったが、情報通りしっかりと営業していた。

もちろんこういうことも埼玉県ではよくあることだ。

 

数十年ぶりに晴れて埼玉県民として「満月」を訪れた私は懐かしい「ワカメ味噌らーめん」を、初めてこの店を訪れた妻はまったく懐かしくない「もやしあんかけ醤油らーめん」をオーダー。

 

皮も自家製で作られる絶品の餃子も忘れずにオーダーし、餃子の“ワンバウンド”用にライスを一つ注文、平和と調和を愛する埼玉県民らしく二人でわけあって食べた。

 

ワカメ味噌ラーメンを一口食べた瞬間に、数十年間頭の中で反芻してきた味の記憶が蘇り、その記憶をむさぼるように食べた。

 

やはりこの店は美味しい。

ツマも気に入ったようだ。

 

嬉しいことに、店の高齢のご主人も女将さんも元気な様子。私のことはまったく憶えていないようだが、私もお二人のことはまったく憶えていないのでお互い様だろう。埼玉県民はクールなのである。(続く)→その3